「映画で世界を愛せるか」


国際交流基金賞を受賞した映画評論家佐藤忠男氏の受賞記念講演。
佐藤さんは、映画評論家のなかで最も多くの著作がありギネスものだと近代美術館フィルムセンターの岡島さんの絶賛の挨拶から始まりました。淀川長冶さんの倍位あるそうです。受賞理由はアジアの映画を多数日本に紹介したことだそうです。
日本映画の紹介も多く、著書は、国を超えてきわめて高度な入門書であるとも。

日本映画の歴史から諸外国との交流まで幅広い分野を話されました。
佐藤さんが最も好きな映画はモンゴルの遊牧民の映画だそうです。ある一家の主婦が心を病んだので集団から離れて医師を求め旅を続けるうちに病が治ったという話で、「モンゴルには、『頭がおかしくなったら草原に行けばいい』という言い伝えがある」そうです。
今は世界の映画界はハリウッドに席巻されてるが、ハリウッドの映画は「ものを破壊するものばかり作っている。世界の滅亡(笑)を感じて作ってるのかも知れないが、対極にあるのがモンゴルの映画だ。モンゴル人は遊牧民なのでものを大切にする」
「日本の映画は長い間認めてもらえなかった。小津安二郎が世界に認めてもらうのに、15,6年かかった。日本の映画は、日本人が洋服着て畳に座って飯食ってるだけだと批判されてた。」
「いいもの作っても理解されるまでには、長い年月がかかるものなんです。私はアジアの国々から招待されていろいろ映画をみせられてきたが、よくほめてきた。いい仕事してるのに誰も気がつかないのはよくないと思ってる。校長をつとめてる映画学校でも生徒の作品はよくほめているので、『ほめる校長』と批判記事を書かれている。実際、生徒はいい作品を作って賞をとってるんです」
佐藤さんは夫妻で手弁当でたくさんの映画を見て紹介してきたそうです。
夫人の父が英語教師で、夫人も英語が堪能なので家族の協力もあり翻訳を手伝ってもらってきたのだそうです。
少数民族の映画のなかにもいい映画がたくさんあり、少数言語をボランテアで翻訳してくれるという奇特な方たちもたくさんいるので、ぜひたくさんの映画を見てもらいたい」
1970年代に山田洋次監督と「幸福の黄色いハンカチ」を携えて東南アジアを回ったという話をされたのですが、ちょうどこの会場に来る前に、ギンレイで上映されてた「幸福の黄色いハンカチ」を見てきたばかりだったので、繋がってる!って思ってびっくりしました。
映画ファン、佐藤さんファンの方々、映画学校の生徒さんらしきかた、外国人、映画関係者でいっぱいでした。