パイプオルガンコンサート

今回の18切符の旅の主目的は、今夜のパイプオルガンコンサートだったのです。
この春、今年の夏の旅はどこにしようかと考えていたときに、ふと思い浮かんだのが、岐阜県の白川町でパイプオルガンを制作しているという辻さんのことを思い出したのです。
20年近くまえ、アジアの留学生たちと交流する会で、ホストファミリーの辻さんと知り合い、ご自宅に伺う機会にめぐまれました。
そのとき、ご主人の弟さんがパイプオルガンを制作するために岐阜県の白川町に移住し、廃校になった学校を借りて工房を開いているというお話を伺いました。
その工房には海外からも弟子入りしてきたり、当事の美智子妃殿下とのあたたかいご交流が生まれたエピソードなどすばらしいお話があったのです。
その辻さんについて調べてみたら、残念なことにお亡くなりになっていましたが、辻さんの制作したパイプオルガンが白川町町民会館にもおさめられており、毎夏コンサートが開かれているということがわかりました。
それで、このコンサートを聞きに行こうと旅の日程を決めました。
白川町といったら白川郷の近くかなと思ったら、全然ちがいました。
かなり離れています。
地理も路線図もなにもわからないところから調べていってどうにか行けそうだとだんだん自信がでてきました。
18切符を最大限有効に使うもってこいの旅だったのです。
早朝ムーンライトながらの終着地大垣に着き、すぐに市内巡りをし、そのあと岐阜駅にも立ち寄り、それからまた電車で1時間余り、目的地の「白川口」という小さな駅に到着しました。
 
会場に着いてスタッフの方に聞いたら、今、イタリア人の先生を講師に「白川 イタリア オルガン音楽アカデミー」というパイプオルガンの講習会が催されていて国内のパイプオルガン奏者たちが全国からきて参加してるところだと話してくれました。
白川町町民会館のパイプオルガン
http://kankou.town.shirakawa.gifu.jp/map/2008/07/post_6.html
開演時間を確かめてから、かなり間があるので近くの中華レストランで夕食をとることにしました。
ウエイトレスさんに、コンサートを聞くためにはるばる来たと話したらとても驚き喜んでくれ、始るまでここで休憩してていですよと言ってくれたので安心して待ってることができました。
ウエイトレスさんは珍しがっていろいろ話しかけてきます。
この中華レストランは、中国人夫婦がオーナーで地元の主婦の彼女はパートで働いてるのだとか。
以前辻さんから聞いたとおり、会館のそばには記念碑が建っていましたから美智子さまと清子さまがこの町を訪問されたことも確かめることもでき、ウエイトレスさんともそういう会話をたのしみました。
そのうちに隣席にイタリア人の先生のような方と数人の若い女性たちがお客として席に着き、とてもたのしそうににぎやかに会話がはじまりました。
このアカデミーに参加されてる先生と生徒さんたちみたいです。

会場には辻さんの制作したパイプオルガンが高くそびえたってるように見えます。荘厳な雰囲気をかもしだしています。
長い間夢みていた辻さんのパイプオルガンにおめにかかれて感慨ひとしおでした。
開場10分前ころ、私の席のすぐ前に品のある老婦人お二人が話しながら入ってこられました。
この方が辻夫人だなと察して、すぐに駆け寄り話しかけました。
やはり辻さんでした!
義姉の辻さんから聞いていた話や、わざわざ今夜のために来たということを手短に話したのですが、大変驚かせてしまったようです。
でもとても喜んでくださったようで、時間があればこの会場の3階にもパイプオルガンがあるのでお見せしたかったわとおっしゃってくださったのです。
 
ほんの数分のできごとでしたが、辻夫人にお会いできたことだけでも感無量でした。
20年もの間、おりにふれ辻さんご夫妻のことが脳裏をかすめていて、とても気になる存在だったのです。
パイプオルガン奏者は立教学院オルガニストの崎山さんでしたが、
おごそかな音色に身がひきしまるような感がいたしました。
朗読とオルガン演奏や、「見上げてごらん夜の星を」を会場のみなさんと歌ったりと幅広いプログラムでした。
白川町は山の中の小さな町でしたが、辻さんの活動をとおして今ではりっぱな国際的なまちになっていたのです。
辻夫人は、外国のお客さまたちと流暢な英語でお話しされていましたが、とても素敵な経歴の持ち主なんですよ。
辻さんの工房
http://homepage2.nifty.com/torgan/

<NHKの番組から>
日本のパイプオルガン製作の草分けとして世界的にも著名な辻 宏さんの工房を訪ねます。辻さんは東京芸術大学器楽科を卒業後、パイプオルガン製作に魅せられて欧米各地を巡り技術を学びました。帰国後は教会、ホール、学校などに81台のオルガンを作りました。岐阜県白川町にある廃校になった小学校の木造校舎が工房です。
(イタリア・スペインの歴史ある教会の古いオルガンの修理も多数手がけてます)

辻 紀子
翻訳家 1955年 北海道教育大学英文科卒業。
1955~58年 アメリカ、カリフォルニア大学バークレー校に留学。帰国後、翻訳を始める。
1960~63年 夫、辻宏(オルガン建造家)と渡米。ヨーロッパをまわって帰国後、パイプオルガン工房「辻オルガン」を設立。 この間、オルガン音楽を通して日本と海外のオルガニストの交 流、研究の機会をつくるために努力している。