ハルペンジャックさん

忙しくて読めなかった新聞記事をとっておいたので、何日分もまとめて読んでたら、その記事のなかの著名人の何人かに纏わるちょっとしたエピソードを思い出したのでここに記しておきたいと思った。
とてもなつかしい人物が一人載っていた。
それは、イスラエル人の漢字研究者のハルペンジャックさんで、20年位前、当時7年もかけて外国人のための漢字辞書を編纂して新聞などで話題になっていて、
自身の名前も漢字で「春遍雀來(ハルペンジャック)」と命名していた。
そのころ、ハルペンさんの講演会が近くであることを知ったのです。
ハルペンさんは、市内に住んでいました。
講演会に行って話しを聞きたかったけど、子どもたちが小さかったのであきらめていたのです。
それがたまたま当日の朝、知人が訪ねてきて、ハルペンさんのチケットが余ってるから行かないかとチケットを2枚もってきてくれたのです。なんという幸運が舞い込んできたのでしょう!急遽、下の息子たちを夫に預け小学生の娘をつれていくことになったのです。
外国人から見た日本の印象について語るという話だったのですが私は異文化を知るということにとても関心があったのだ。
ハルペンさんは、ユーモアの著書もある方なので、体験した日本と母国の違いについてとってもたのしく語ってくれたのです。
ハルペンさんは、一輪車の普及にもつとめておられ、世界中どこにいくときでももっていくそうで、一輪車協会の理事でもあり多才な方でした。
講演の最中、一輪車を持ってこられ突然一輪車にまたがったかと思ったら、会場を見回して我が家の娘を手招きして壇上にあげ
いきなり彼は私の娘を肩車にして乗ってみせたのです!観客のなかに子どもは、ほとんどいなかったので、娘が選ばれたようでした。
突然の芸当!に会場はみなびっくりでした。
講演のあとハルペンさんが質問を受けつけたら、ほとんどの方はハルペンさんの講演内容に反論するような意見を言われるのでした。
私はその場で発言する勇気もなかったので、あとでハルペンさんのお話に共感したという感想の手紙を書いたのです。
それからすぐに、突然電話がかかってきて受話器をとったら「ハルペンジャックです。手紙ありがとう、、、」との声にびっくり!!そしてまたまもなく、外国人が書いたとは思われないようなとってもきれいな日本語の文字で、お手紙もいただいたのですよ。さすが漢字博士!と感動しました。
あの日のことが忘れられません。
その後、NHKの英語番組などでもハルペンさんを見たことがあったのですが、最近は全然お名前を聞かなくなっていたので、気になっていたのです。
今回の朝日新聞夕刊の記事には、ハルペンさんは現在、日中韓辞典研究所の社長だそうで、やはり相変わらず一輪車に乗ってる姿が写っていた。

高階秀爾先生のエッセイ「美の季想」もあったが、先週のパーテイでお目にかかって3日後の記事だった。「いつも朝日新聞で拝見させていただいております」とご挨拶させていただいたばかりだったのでとても親近感を覚えた。

丸谷才一さんの文もあった。
私が若いころに丸谷さんは芥川賞を受賞したのです。
私の故郷の近くの出身の方だったので、ある日の地域の新聞に市内で行われた丸谷さんの受賞パーテイの様子が載っていました。とてもビッグなニュースだと思ってその話を職場の同僚たちの話題にしたのです。そしたら、誰も関心を持たなかったのでがっかりしたのです。
それからまもなくのある日、一人の同僚が急に思い出したと言って話してくれたのです。あの丸谷さんのニュースを母親に聞かせたら以外なことがわかったというのです。彼女の母は若いころ丸谷さんの実家の産婦人科医院で助産婦さんをやっていたそうで、看護婦さんたちはみな幼なかった丸谷さんを「才ちゃん、才ちゃん」と呼んでかわいがっていたという。
彼女の両親は丸谷さんの受賞の記事を見て知っていたということだった。
彼女は自分の母が丸谷医院で働いていたことがあったということをそれまで知らなかったそうだが、
この受賞記事から思いがけなく実母の過去を知ることになったのだった。

最後に谷川俊太郎さん。
5,6年前のことである。
そのころ知り合いになった方から大泉学園のジャズのライブに誘われた。
その日は谷川俊太郎さんの息子さんでジャズピアノ奏者の谷川健一さんの出演だった。
ピアノの演奏を聴いてしばらくたったころ、バーの隅で谷川俊太郎さんが一人ひっそりと飲んでいるのが目に留まった。
私はいままで谷川さんのことに関心をもっていたので、思い切って帰るときに話しかけたのだった。
夫が同じ高校出身だったことから挨拶させていただき、私が気に入っている谷川さんの著書の話や、
我が家へホームステイにきたウクライナの大学で講師をやっていた女性の話をした。
ウクライナの女性が谷川さんを大学の卒論に選んだということを伝えると谷川さんはとても驚きながら
も喜んでおられたようだった。
ウクライナの女性から谷川さんの話を聞いたときから、なんとしても谷川さんに伝えてあげたいなと思っていたのだが、実現できてほんとうによかったと思った。
「強く願えば、願いは叶う」ということばは本当だなって実感したときだった!