祝電

買い物から帰ってきてポストを覗いたらなにやら見慣れぬものが入っています。不在中の電報配達のお知らせと書いてあるではありませんか。
電報?とは何事が起こったんだろう、、いぶかしく思いながら取り出してみたら分厚いものです。
おそるおそる開いてみたら、「お誕生日おめでとうございます」という文字が!
なんと遠方に住んでいる旧友からでした。
彼女らしいことだ!って可笑しくなりました。
 

3週間位前、20年ぶりぐらいに彼女から突然電話がかかってきたのです。ほとんど思い出すこともなくなっていた彼女ですから驚きでした。「もうすぐあなたの誕生日だなって急に思い出したの」って突拍子もないことばから切り出されました。
長い間音信不通になっていたので、懐かしくなって連絡してみようと思いたったようです。
いままで過ごしてきた出来事をいろいろ語ってくれたのですが、いろいろなことを経て今は安定した生活をしているとのことを聞いてほっとしました。
高校時代はほどほどの関係だったのですが、卒業してから遠く離れてもう会うこともないだろうというぐらいになったのもつかの間、就職してから半年後、彼女は突如、難病に冒され大手術を受け生涯、障害の身となって、性格まで変わっていってしまったのです。
一生結婚することもないだろうといってたのですが、なんと数年後には結婚の話があり、嫁いだという風の便りを聞くようになりました。
その彼女は、自身も度々入院を繰り返しながらも、姑を100歳過ぎまで介護し見送り、一人娘はとてもいい人に嫁いで幸福に暮らしているというのです。
若いころの彼女からはとても想像もできなかったようないい人生を送っています。
彼女の話を聞いて、人生はなにがあってもあきらめず嘆くこともないと教えられました。
電話のあった一週間後、「このまえは話してくれてありがとう」というはがきが届きました。
おしゃべりしただけなのにわざわざ手紙を書くというこの律儀な態度に感心しました。
とても無邪気に喜んでる様子が伝わってくるようです。
この祝電は、彼女の幸せを祝福する意味でもあったようです。素直に感謝して受けとりました。
祝電なんて気恥ずかしいような年齢ですが、私の人生で初めてのビッグプレゼントになりました。