明治村 その2

「帝国ホテル」の入り口に入ったとたん お琴の音色が聞こえてきました。音色に誘われるままロビーの奥まで進んでいったらなんと生の演奏だったのです。ソファーに座って静かに聴いてるとゆったりとした気分になり歩き疲れた足がだんだんラクになってきました。
帝国ホテルのロビーでのんびりこんな体験ができるとはなんて至福のひとときなんでしょう!
演奏が終わったあと、演奏家の方が話しかけてくれました。ご自身のことについてもいろいろ話してくれました。お琴の先生をやりながら、ここでもボランテアを月に1,2度10年も続けておられるそうです。夏休みなどには子どもさんたちもたくさん来園されるので子どもたちにも琴の体験をさせてあげるのだそうです。次世代に日本文化を伝えるということも大切にされているのです。宮城道雄の門下生だそうですが、私も神楽坂の宮城道雄記念館に入ったことを話したりしたのですが、無知な私にお琴の歴史、宮城先生の業績などを教えてくださって大変勉強させていただきました。最後に私にも手をとってご指導くださったのです。感激でした!!

話の合間にボランテアさんやスタッフのおじさま方が通りかかりに寄っていかれ私とも話していかれました。
ボランテアさんやスタッフさんみなさんが気さくにすぐに話しかけてくださり、豊富な知識にもとづいたお話をしてくださるのです。
まるで旧知の間柄のようです。
みなさんとお友達になりたいぐらいでした。
そのあと「春の海」から「荒城の月」へと演奏が移っていきました。

ポーツマス講和条約に使われた長ーいテーブルです。

ホテル内では実際にカフェも運営されてます。
2階のカフェで外の景色をながめながら「ゆず入り紅茶」をいただいて一服してきました。

坪内逍遥の「逍遥の道」というのもありました。山道を登ったり降りたり、あちらにもこちらにもたくさんの建築があります。高台に上がるとこんな絶景です。

銀行、商家、写真館、市役所、刑務所、教会、小学校、武道場、電話局、裁判所、歌舞伎座、ラフカディオハーンの別荘、ブラジル移民の家、米国シアトルにあった日本人の家、、たくさん貴重な文化遺産があります。
レンタルの着物で歩くこともできます。
幸田露伴の家に行きました。
常駐しているボランテアさんにお話を伺ったら、最近の若い人、学生さんたちは幸田露伴を知らないんですよ。と嘆いておられましたが、私もびっくりしました。
私たちにとっては漱石と同じくらい常識的でしたから。でも我が家の子たちももしかしたら知らないかも知れないなーってちょっと不安になってきました。
そこへ男子学生が数人入ってきて、メージャーを出してなにやら測っています。
彼らにも露伴のことを聞いたら知らないって言ってました。
私たちがおしゃべりしてるうちに気がついたら
彼らは寝そべっていてまだまだ畳のサイズや間取りなどを測ってるのです。
どうやら建築科の学生さんでした。
まもなく、団体さんを解説する時間ですからここらで引き上げてくださいと指示されやっと腰をあげていました。

そこからまた登ったり降りたりしながら森鴎外夏目漱石邸に向かいました。東京本郷から移築されたそうですが最初に鴎外が住んでいてそのあと偶然にも漱石が住むことになった家だそうです。
家は開放されてたので、上がらなくてもいいかなと思い周囲をぐるっと歩いてみました。
奥のお座敷には、お一人のご老人が琵琶を磨いたりしてるみたいです。
話しかけてみたら、御歳80歳。現役で何かお仕事をされながら琵琶の先生もやっておられるようです。そして10年も前から毎週日曜日欠かさずここで琵琶の弾き語りのボランテアをしてるのだそうです。
一年中冷暖房なしの生活で、弾き語りの日は朝から何もめしあがらないのだそうです。
腹が空っぽでなければいい引き語りができないのだそうです。
明治生まれではないのですが、まるで明治の人のお手本のような気骨ある先生でした。

私ひとりのために、弾いてくださるというので靴を脱いで上がって聞かせていただくことになりました。
外の雑音が入らないようにと襖をしめて、いよいよはじまります。
お題は平家物語の「敦盛」です。

静かに悲しげに語ってくださいました。
感激です!なんという贅沢なひとときでしょう!

床の間には漆塗りのような立派な薩摩琵琶が三体飾ってあります。
他にも置いてありましたが、これら一体は2,3百万もするのだそうですが、ここの明治村に貸してあるのだそうです。
私にも弾かせてくださったのですが、恐れ多いというところでした!
明治の人々の生き方や、「必要な人とは必ず出会うものだ」「人間はみな何かしら使命をもってこの世に生まれてる」とか、人生のいろいろなことを語ってくださったのです。
まるで自分の祖父のようでもありました。
仙人のような、お坊様のような すてきな老翁さまでした。
いただいた和紙の名刺です。

明治と聞くだけで古い日本建築を思い浮かべてきたのですが、文明開化の時代で西洋の文化が入ってきたときだったのです。
ですから洋風建築が多いのでした。
建築物を見にきたつもりが意外にもたくさんのすてきな方々との出会いのほうが多かったのです!
皆様とお話して癒される思いでした。
歴史の勉強になると思ってきたのですが、歴史のみならず、解説ボランテアさんがそれぞれ多彩なお話もしてくださるので、思いがけない収穫がたくさんありました。

地図だけ見て一人で回ってたら気がつかないものがたくさんあったのです。
ボランテアさん、スタッフさんたちと少しでも
コミニュケーションをとることが10倍も楽しめる大事なポイントだと気がつきました。

仏作って魂入れずとか、ハードとソフトの関係
とかいろいろありますが、ここ明治村は仏に魂が入ってる、ハード面だけでなくソフトがしっかりいいものが入ってるという感じで、日本人の良さを再認識して日本人であることを誇りに思えるような気分になりました。
ありがとうございます!